<今どきの更年期>男性にも、めまい・うつ(毎日新聞)
◇ストレスで症状悪化 「人生、減速の時」意識を
4年前の秋、長野県で自営業を営む男性(52)はイスから立ち上がろうとした時、今まで経験したことがないめまいを感じた。「遊園地の回転イスに振り回されているようで、吐き気もひどかった」
突然のことに驚き、脳外科に駆け込んだ。CTスキャンで検査しても異常は見つからず、その後も症状は続いた。横向きに寝てじっとしていると少しは治まるが、動くとすぐに気持ちが悪くなるという繰り返し。そんな時、受診先で50代の女性看護師が「もしかしたら更年期じゃない? 私もひどい時は同じようになるわよ」とアドバイスしてくれた。
わらにもすがる思いで泌尿器科を受診。血中の男性ホルモン量が一般男性の基準値よりかなり低かった。男性ホルモンを投与してもらったところ2カ月後には症状が緩和した。現在も月1回、定期的に治療を続けている。
思い返せば、40代半ばから腹筋や首の筋肉の衰えを感じ始めていたという。大勢の人の前で話す時、滑舌が悪くなり、口が重くなってきたと感じていた。こうした症状も、現在は改善されている。
「まさか更年期とは。40代から始まっていたのかもしれませんね」
同年代の妻も2年前からめまいに悩まされ始めた。「お互い理解し合いながら更年期を乗り越えていこう」と夫婦で話し合っている。
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男性にも更年期症状が表れることが近年、注目されている。女性は閉経前後に女性ホルモンが激減するのに対し、男性ホルモンは20代から徐々に減るため分かりにくい。専門医も少ないのが現状で、内科、脳外科、耳鼻科などを転々と受診する「ドクターショッピング」になりがちだ。
長野赤十字病院(長野市)の第2泌尿器科部長、天野俊康さんは「中年期以降の男性で、原因が分からない心身の不調に悩まされたら、更年期障害を疑ってみてほしい。総合病院などの泌尿器科に相談を」と話す。
メンズヘルス医学会と泌尿器科学会は、「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」と名付け、血液中の男性ホルモン(フリーテストステロン)量による診断基準を示している。
症状としては、(1)身体面(筋肉・体力の低下、ほてり、めまい、耳鳴りなど)(2)メンタル面(不眠、いらいら、うつ傾向など)(3)セクシュアル面(性欲減退、勃起(ぼっき)不全)−−に大別される。「体に力が入らない」と訴える患者が多いが、症状には個人差が大きい。精神科を受診し、抗うつ薬を服用している患者もいる。
「性格や環境も影響する」と天野さんは指摘する。きちょうめんで、若いころからバリバリ仕事をこなしてきた人に多いという。40〜50代は中間管理職を務めたり、不況やリストラへの不安などストレスが大きい。親の介護や死別、子供の自立、妻との2人っきりの生活など家庭環境の変化も重なり、症状が重くなりがちという。
治療法としては、男性ホルモンが低下している人は原則的に、ホルモン補充療法が有効とされる。うつ症状の強い人には抗うつ剤の併用、勃起障害には「バイアグラ」などの治療薬が使われ、全体的な症状をみながら漢方薬も活用できる。
「夫婦一緒に更年期を乗り越えることで、今までと違う関係を築くことができる。がむしゃらに走ってきた人生をギアチェンジし、減速する時だという認識が男性にこそ必要」と天野さんは話す。【小川節子、写真も】=おわり
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■男性の更年期のチェック表
◇採点法
なし(1点)、軽い(2点)、中くらい(3点)、重い(4点)、非常に重い(5点)
◇チェック項目
(1)全体として不調
(2)関節、筋肉の痛み
(3)発汗
(4)不眠
(5)よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
(6)いらいらする
(7)神経質になった
(8)不安感
(9)身体の疲労や行動力の減退
(10)筋力の低下
(11)憂うつな気分
(12)「人生の山は越えた」と感じる
(13)力尽きた、どん底にいると感じる
(14)ひげの伸びが遅くなった
(15)性的能力の衰え
(16)朝立ちの回数の減少
(17)性欲の低下
◇合計点の判定
男性更年期障害の程度
17〜26点 なし
27〜36点 軽度
37〜49点 中度
50点以上 重度
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